相続登記の義務化で何が変わる?
不動産の登記って?
不動産登記は、不動産の権利関係を公示する制度です。 法務局やオンライン上で、誰もが手数料を払って、全国の不動産の登記事項証明書(登記簿)を取得し、所有者はだれか?などの権利関係を知ることができます。
現在の登記制度は、不動産の権利関係の移動や変更などがあった場合、その情報がすぐに更新されればいいのですが、登記申請をするか?は当事者の自由なのです。
つまり、登記が任意であることで、不動産の登記簿上の所有者は、必ずしも真の所有者であるとは限らない!?というおかしなことになっています。
相続登記をするには、費用がかかります。頑張って自分で登記申請をしても、不動産の固定資産の評価額の0.4%という登録免許税は、必ずかかります。(一部減免あり)
売買のように他人間の権利移転と違って、相続の場合はすぐに登記をしなくても困らないから後ですればいいと思って、そのままになっているケースが多数あります。
新聞などの報道によると、既に亡くなっている人の名義となっている相続登記未了の不動産は、日本の国土の2割超!(九州より広い)だとか。
そして、相続登記をしないまま長期間が経過すると、どうなるか?
さらに相続が発生し、相続人の数は増え、百人を超えるようなケースも実際にあります。 そうなれば、いざ登記をしようと思っても、この人数の印鑑をもらうことは、ほぼ不可能で、弁護士に依頼しても費用と時間はどれだけかかるのか?と考えてあきらめてしまうケースも珍しくありません
「空き家」が社会問題に
例えば、所有者死亡後、空き家となっている建物が、壊れて隣家に倒れかかってきている。朽ち果てた建物でも、他人のものは勝手に扱うことはできません。そこで、相続人に何とかして欲しいと連絡をとろうにも、登記簿の名義は亡くなった人のままで、誰が相続人でどこに住んでいるのかもわからないとなると、隣家の住人は、途方に暮れることになります。これがいわゆる「空き家」問題です。
また、東日本大震災や近年多くみられる豪雨などの自然災害による復興事業においても、所有者不明の土地があることで、土地買収が進まず、所有者探索に多大な時間と費用(公費)を要し、復興が進まない大きな要因となりました。
相続登記の義務化へ
このような問題を解決するために、令和3年、国会で相続登記を義務化する改正法が成立しました。改正法は令和6年度までに施行の予定です。
法律が施行されると、施行後に不動産の所有者が死亡し、その不動産を取得した相続人は、3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなります。
もし、3年以内に相続人間で遺産分割協議が成立しない場合でも、相続人を公示する「相続人申告登記」なる行う必要があり、この義務を履行しない場合は、10万円以下の過料が課される可能性がありますので、注意が必要です。
また、併せて所有者などの登記簿に住所が記載されている方の住所の変更があった場合も、2年以内にその変更登記をしなければならないとされました。
改正前の相続登記も対象に
今回の改正法は、法律の施行前に相続が発生しているが、相続登記が未了であった場合にも、施行後3年以内に登記をしなければならないとされていますので、以前の相続でも登記が済んでいないものはないか?を確認する必要があります。
もし、何か疑問などがあれば最寄りの法務局か司法書士へ。司法書士会では、相続登記相談センターも開設されています(0120-13-7832)ので、お気軽にご相談ください。
社会全体の問題として
急に義務化と言われても・・・お金もかかるのに、どうして?と思われるのは当然です。しかし、近年の社会問題となっている「空き家問題」や「災害復興の遅延」などは、いつか誰もが、困る側に立つことになるかもしれない、みんな当事者なのです。
だから、不動産の所有者は適正に管理を行い、近隣に迷惑をかけないようにする。そして、相続が発生すれば速やかに登記することを義務とすることで、みんなが安心して暮らせるようになるとすれば、必要な改正ではないでしょうか?
(補足)今後国会では、相続登記の義務化に伴い、登録免許税の負担軽減措置が検討される模様です。