住所の記載のない表題所有者からの所有権保存登記(相続)
こんにちは。司法書士の岩永加寿美です。
朝夕は、肌寒さを感じるようになりました。
しかし、この季節はとても空気が澄んでいるので、夜空の月がとてもキレイです
最近の相続案件
登記の依頼を受けて、謄本をとってみると土地の登記が表題部しかない。
つまり、所有権の登記がされていない。
ここまでなら、相続による所有権移転登記ではなく、
相続証明書を添付して、相続人から「所有権保存登記」をすればいい・・・という話。
しかし、今回は名前があっても住所の表示がない。
依頼者の話によると、表題登記の所有者は「曾祖父」で、亡くなったのはかれこれ昭和も戦前のこと。
これは、表題所有者「松田優作(仮称)」と曾祖父「松田優作」が同一人物であることの証明が難しくなる可能性が少なくとも法務局との事前協議は必須
ここで、登記の大原則の話を・・・
不動産登記は、所有者の表示を「住所」「氏名」で登録します。
ですので、もし所有者の住所や氏名が変更になっていれば、それを証明する「住民票」や「戸籍謄本」などで、変更の履歴(つながり)を証明して「同一性」の確認をします。
今回は、本人の同一性を証明する為の重要な要素である「住所」の記載がないのです。
そうなると、例え名前が一致していてもその土地の表題所有者「松田優作」を曾祖父「松田優作」を限りなく一致に近づける方法を考えなければなりません。
① 曾祖父「松田優作」が土地の固定資産税を納付していたか?を役場の固定資産税課で調査して、評価証明書を取得します。
② 松田優作が持っていた「権利証(登記済証)」は存在するか?
③ その土地の所在地に本籍があるか?もしくは住所があるか?
どれも、公的な証明書として曾祖父松田優作がその土地についての権利者として密接に関与しているか?を証明するものを出来れば2点は揃える必要があります。
※あくまで福岡法務局での取扱いで他の管轄の法務局には具体的にお尋ね下さい。
公的証明書に「松田優作」の名前が出てくるか?が結構重要なポイントなんですが、役所によって様式や出すべき情報などに差があるので、その辺りは窓口と交渉して備考欄に記載してもらったりと苦労するところです。
あとは、揃えられるだけの書類を持って、いざ法務局へ打合せに~
実は、こんな地味で細かい部分で調査や交渉をして証明書を取得する。
けっこう時間もかかるし専門的な知識がとっても必要になるところなんですけど、
できあがりの登記だけ見れば、そんな苦労の痕跡は残りません
こんな苦労もマイナンバーで土地の所有者を管理するようになれば、無くなる問題なのかもしれません。こんな風に書くと、マイナンバー推奨派のようですが、やはり国が個人の情報をすべてひも付けして把握、管理することには、抵抗があります・・・・