身近な方が亡くなったとき、その方が持っていた財産を受け継ぐことを「相続」といいます。そして、その財産を受け継ぐ人は「相続人」です。
「相続」が発生した場合、被相続人(亡くなった方)が持っていた権利は、当然に相続人が受け継ぐことになりますが、その手続は複雑でわかりづらいものです。
葬儀までは終わったけれど、まず何から手をつければよいのか?いつまでに手続しなければならないか?悩ましいところです。
1.相続手続の流れ
①相続人・相続分の確定
配偶者と子がいる場合 | 配偶者1/2、子ども1/2 |
配偶者があり子がいない場合 | 配偶者2/3、直系尊属1/3(両親、両親が亡くなっていれば祖父母) |
配偶者があり子がなく 直系尊属がいない場合 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 |
配偶者、子がいない場合 | 直系尊属1/1 |
配偶者、子、直系尊属がいない場合 | 兄弟姉妹1/1 |
②財産調査
相続する財産は、プラスの財産や権利だけではなく、マイナスの財産(借金など)や義務も対象になります。財産がどこに何があるか?が分からない場合は、遺品や郵便物などを手がかりに調査をする必要があります。
手がかりになるもの | ・不動産の権利証(登記識別情報) ・固定資産税の納税通知書 ・通帳・キャッシュカード ・株式の配当金通知書 ・投資信託の運用報告書 ・クレジットカード・明細書 など |
銀行口座などは「確か○○銀行と以前はつきあいがあったはず」「解約したのか?通帳などを紛失しているのでは?」と思われる場合は、該当の金融機関へ相続人(全員でなくてもよい)から被相続人名義の取引の照会をすることができます。
その際に、必ず被相続人が死亡を証明する書面(除籍謄本など)と照会する人が相続人であることを証明する書面(戸籍謄本など)を提示する必要があります。
当事務所では、委任をいただければ、各種金融機関や保険会社への面倒な手続などを代行することもできます。ぜひご相談下さい。
③遺言書の有無
遺品の中に遺言書らしきものはありませんでしたか?生前に「遺言を書いた。」というようなことを言っていませんでしたか?
遺言書は、大きくわけて、自筆で書いた「自筆証書遺言」と公証役場で作成した「公正証書遺言」があります。
公正証書遺言の場合は、原本は公証役場で保管されていますので、最寄りの公証役場(全国どこでも)で被相続人の遺言があるか?を照会することができ、あれば謄本をとって内容を確認することができます。
自筆の遺言書があれば、家庭裁判所で検認という手続をしなければなりません。封がしてあれば勝手に開封してはいけません。また、遺言書を隠したり破棄したりすれば、相続資格を失うことになりますので、絶対にしてはいけません。
遺言書がある場合は、その内容に従って財産を受け継ぐことになります。
④限定承認と相続放棄(3ヶ月以内)
相続が発生すると、相続人が被相続人の権利や義務を受け継ぐことになりますが、例えば、被相続人のプラスの財産よりも借金が多い場合や被相続人との生前からの関係から受け継ぎたくないということもあるでしょう。
そのような場合は、原則、被相続人の死亡を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して「相続放棄」の手続をとる必要があります。相続放棄をすることによって、被相続人の一切の権利義務を承継せず、相続人ではなくなります。
この「相続放棄」の手続は、3ヶ月以内にする必要がありますが、例えば、被相続人の財産を受け継ぐつもりでいたとしても、死亡後1年後に借金の督促がありそのときに、初めて負債があることを知ったような場合は、例外的に、3ヶ月を経過した後でも「相続放棄」を受け付けてくれる場合がありますので、あきらめずに当事務所までご相談下さい。
また、相続人が被相続人の財産を受け継ぐ場合に、プラスの財産の範囲で負債を返済する「限定承認」という手続を選択することもできます。これには相続人全員で手続をとる必要がありますので、みなさんでよく話し合って下さい。
「相続放棄」と「限定承認」の手続は、相続人が、被相続人の財産を売却などの処分をしたり、負債を返済したりした場合には、相続を承認したものとみなされて、できなくなることがありますので、財産調査をしっかりした上で、処分をするようにして下さい。
⑤準確定申告(4ヶ月)と相続税(10ヶ月)の申告
被相続人が、個人事業主であったり、不動産所得などがあり、確定申告をしていた場合や一時所得などがあって、翌年の申告期間中に確定申告をする予定だった場合、亡くなった日から4ヶ月以内に準確定申告を相続人全員からする必要があります。
医療費や住宅ローンなどで、税金の還付を受けられる場合にも、準確定申告で、還付手続をします。
また相続税は、相続によって財産を取得した「法定相続人」と遺言書によって遺贈を受けた「受遺者」が納税義務者となり、相続発生の日の翌日から10ヶ月以内に、被相続人の所轄税務署に、相続税の申告及び納税をしなければなりません。もし遅れた場合には「加算税・滞納税」の対象になりますので、注意して下さい。
なお、相続財産が基礎控除以下である場合には、相続税の申告は必要ありませんが、その他小規模宅地等の評価減・配偶者控除などを受けようとする場合は、申告が必要です。
詳しい内容は、お問い合わせいただければ信頼できる税理士を責任をもってご紹介致します。
⑥遺産分割協議
遺言書がなかった場合は、被相続人の財産は法律上、相続発生時に相続人全員の共有となります(遺産共有)。
もちろん不動産や株式なども共有ですので、権利を行使する場合でも、相続人の意見を聞いたり同意が必要になったりと何かと大変なので、共有のまま持ち続けるというのは、あまり現実的ではありません。
多くの場合は、被相続人の財産について、相続人間で分け方を決めることになります。これを遺産分割協議といいます。遺産分割協議は、相続人全員でする必要があります。
遺産分割協議の内容が決まりましたら、後日争いにならないためにも「遺産分割協議書」を作成して、全員が署名捺印(実印がベスト)し、印鑑証明書とともに保管することをお勧めします。
⑦相続財産分配手続
遺産分割協議の内容に従って、それぞれ権利を取得した相続人から各機関へ相続手続を行います。
- 不動産の相続登記
- 銀行等預金の引出し
- 株式の名義書換
- その他の財産(動産など)の引渡し
- 被相続人の債務(借入)の届出
各機関の申請様式に従って手続をすることになります。予め準備としておくとその後の手続がスムーズに運びます。
主な手続に必要となる書類 | ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・相続人全員の現在戸籍謄本(抄本) ・相続人全員の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内) ※印鑑証明書は手続をする機関の数は必要になります(原本を提出を要求されます) |
当事務所では、遺産分割協議の進め方や協議書の作成のアドバイス、相続人への財産の分配についての手続についても、お手伝いしています。
詳しい内容は、お問い合わせいただければ信頼できる税理士を責任をもってご紹介致します。